2016年は申年。干支にはどんな意味があるの? ~完結編~
<前回までのあらすじ>
横浜中華街にあるラーメン屋。そこの住み込み店員である母親の下で過ごしてきた北島マヤは、背は低く、注目を集めるほどの美人でもない。
勉強も出来ず、不器用な彼女だったが、演技の資質だけは、まさに天才の類であった。
これは、そんな彼女が演技の世界に身を投じ、才能を開花させ、成長していくストーリーである。
<前回の話はコチラ>
夜明けとともに始まった過酷なレース。どの動物も横一直線になり、前を行く牛に追いつこうと、必死にもがいていました。
しばらく走ってもいっこうに見えてこない牛に対して、動物たちは一斉に気がつきます。あのクソ牛、騙してやがったなと。この瞬間、全員はとにかく2位なることを目標にし、さらにスピードを上げていきます。
レース中、会話らしい会話は一切ありません。
とにかく、少しでも他の動物たちから距離を置き、ゴールするのだと必死です。
しかし、レースも中盤を過ぎた頃、犬とサルが喧嘩を始めます。真っ暗でないと眠れないサルに対して、常夜灯派の犬が食ってかかったのです。
しょうもない喧嘩に、みんながドン引きしていたとき、間に入って止めたのは鳥でした。さすが、一番美味しい肉はひと味違います。
醜い争いが続いている後続を尻目に、牛はいよいよ神様の住んでいるところまでやってきて、チャイムを鳴らします。
神様たちは「お、さっそく来たようですね」と話しながら玄関へ行き、ドアを開けました。とその時です。
ネズミ「遅くなってすみません。自分が一番に到着しました」
神様はネズミを招き入れます。牛は何が起きたのか理解できません。4本足で立ち尽くす牛に、ネズミは、「ずっとお前の頭の上に乗ってきたんだけど。気づかなかったの?」と、まるで家畜を見るかのような目で言い放ちました。
そう、ネズミは牛がスタートすると同時に、後続が追いつくまでの間は、牛の頭上でのんびり過ごそうと考えていたのです。しかし、そのまま牛がゴールするものだから、玄関が開いた瞬間に、牛より前に立ち、1位を手にしたのです。
さすがに牛もこれには大激怒…するかと思いきや、卑怯な手を使って勝とうとしたのだから、当然の結果、2位で十分だと言ったのです。今さらの正義感アピールです。
牛が自分に酔っていると、次々とほかの動物たちもゴールしていきます。
3位はトラ。トラは最後まで本当にレースが開催されるのか疑っていました。神様がレースを提案するなんて嘘だろうと考えつつも、もし本当だったら困ると考え、あまり本気は出さずに走ったのです。本気を出さないで3位です。
4位はウサギ。ウサギは他の動物たちが途中でエイドステーションを利用したときも、1羽でせっせと走り続けたのです。トラには追い抜かれましたけど、大満足の4位。
5位は竜。5位は竜とヘビが同着だったのですが、ヘビは竜のことを尊敬していました。勝負こそ本気でしたが、終わればいつものように、尊敬すべき存在になります。結果として、竜に5位を譲り、ヘビは6位になったのです。
7位の馬と8位のヒツジは、仲良くゴール。2頭は、レースの終盤から、争ってまで表彰台を狙うことに意味を見出せなくなったのです。
これを理由に、午年と未年の人には、温厚な人が多いと言われています。
9位はサル、10位は鳥、11位は犬。サルと犬は、最後の最後まで、喧嘩をしていました。鳥はというと、結局最後まで2匹の喧嘩を止めるために間に入っていたので、10位になってしまったのです。
この話が由来して、仲が悪いことを、犬猿の仲と呼ぶようになったのです。鳥さんかわいそう。
最下位はイノシシ。実はイノシシは、どの動物よりも速かったのです。本来ならばなんと、牛とネズミにも余裕で追いつくほどでした。しかし、イノシシは直線にしか走れず、木に何度もぶつかり、大きなタイムロスをしてしまいました。結果、トボトボと歩き、到着してみると最下位。まったくもって鍋が美味しい動物です。
また、この話が由来して、突き進むことを、猪突猛進と表現するようになりました。
こうして、結果が出そろい、12種類の動物たちには「干支」の称号が与えられたのでした。
レース後、みんなで森へ帰ると、そこには猫が待っていました。なぜレースに参加しなかったのかと、みんなが不思議そう尋ねると、猫は、レースが明日へ延期になったとネズミから聞かされたと話します。
なんと、猫はネズミに騙されたのです。
以来、猫はネズミを追いかけるようになったと言われています。
こうして、午後からは自由な時間が欲しいと考えた、しょうもない神様たちによって開催されたレースと干支の称号は、いつまでも語られるようになったのでした。
おしまい
Yusuke